歴史に定説なし。気になる古典・古事・古人・古文を総まとめ。


蜀山百首(しょくさん ひゃくしゅ)。蜀山人自筆百首狂歌(しょくさんじん じひつ ひゃくしゅ きょうか)とも。

著者は蜀山人(しょくさんじん)。

蜀山百首の全首一覧

春二十首

001.あらたまの としのはじめの 福寿草 禄といふ字は その中にあり
002.なまゑひの 礼者を見れば 大道を よこすぢかひに 春は来にけり
003.見わたせば 大橋かすむ 間部河岸 松たつふねや 水のおも梶
004.春がすみ たちくたびれて 武蔵野の はら一ぱいに 延す日のあし
005.慈悲心も 仏法僧も ひと声の ほうほけきやうに 如くものぞなき
006.子の日する 野辺に小松の 大臣は いまも賢者の ためしにぞひく
007.まな板の こぐちにはれる 青紙の いろも若菜に およぶものかは
008.おれを見て また歌をよみ ちらすかと 梅の思はん ことも恥かし
009.ふみこのむ 木を右にして やり梅を 左にかざす 御代ぞかしこき
010.一刻を 千金づゝに しめあげて 六万両の 春のあけぼの
011.すみだ川 のちのあしたも 細見の 山がたなりに 帰るかりがね
012.何なりと このめはるさめ ふり袖の 新造まじり ゐつゞけの客
013.青柳は めはな眉髪 こしもありて 前のなきこそ うらみなりけれ
014.ところ/”\ ふし/”\ありて なまよみの 甲州いとに 似たる青柳
015.一めんの 花は碁盤の 上野山 黒門まへに かゝるしらくも
016.風のいる すきまも見えぬ やまざくら 桜が山か やまがさくらか
017.さかづきも さすが女の 節供とて もゝのあたりに 手まづ遮る
018.やまぶきの 口なしめしや もらんとて おたま杓子も 井出の玉川
019.杜若 むかしはいせの ものがたり いまはめでたく ひらく三河記
020.上からも 下からもまた 花とはな あはせかゞみか 池のふぢなみ

夏十五首

021.春なつの ちかしき中は なほさらに かきをせよとや 咲ける卯花
022.この神の わけいかづちぞ ありがたき 仰いでも猶 あふいでも猶
023.ほとゝぎす 鳴きつる跡に あきれたる 後徳大寺の ありあけの顔*1
024.いかほどに こらへてみても 郭公 なかねばならぬ むら雨の空
025.鎌倉の 海より出でし はつ鰹 みなむさしのゝ はらにこそ入れ
026.早乙女の 脛のくろきに 仙人も 通をうしなふ 気つかひはなし
027.のぼり竹 すぐなるよとは 上下の あさのなかなる 蓬にぞしる
028.さみだれに いゝだく空の 底ぬけて 水たまらねば 屋根ももる殿
029.人なみに 窓の螢は あつめても しりからもゆる 火をいかにせん
030.惟光が たちながらくふ 蕎麦のいろ いよ/\くろし 夕顔の花
031.撫子の 后のお名に さしありて まはしにとれる とこ夏のはな
032.いつはりの なきよなりせば 本なれの 西瓜の皮に 穴はあけまじ
033.質蔵に かけし地赤の むしぼしは ながれもあへぬ 紅葉なりけり*2
034.去年から 気を張りつめし 氷室もり こよひや心 とけ/”\とねん
035.心だに ちのわ*3のごとく まろからば くゞらずとても 神や守らん

秋二十首

036.風鈴の りんとひゞきし あきかぜは 荻の上はの 一文のぜに
037.天の川 ながれわたりの もろかせぎ*4 牛をひこ星 はたをおり姫
038.しら川の お関所ならば なが櫃の なかあらためて みやぎのゝ萩
039.女郎花 口もさがのに たつた今 僧正さんが 落ちなさんした
040.花すゝき はうき千里の 武蔵野は まねかずとても 民のとゞまる
041.大空に かり/\/\の 声するは たが書だしや かけてきぬらん
042.秋はてば やがて紅葉の 吸物と なるともしかと しらで鳴らん
043.しらず心 たれをかうらむ 朝顔は ただるりこん*5の うるほへる露
044.かくばかり めでたくみゆる 世の中を うらやましくや のぞく月影
045.分厘の 雲さへはれて そろばんの たまの三五の 十五夜の月
046.清書も 上る二度目の 月影は また一段と 見事なりけり
047.大菊を めづる狂歌は 鼻紙の こぎくを折りて 書くもはづかし
048.七百の 慈童もありと きくの花 高野六十 那智はものかは
049.龍田山 こぞの枝折は 林間に さけあたゝめて しれぬもみぢは
050.おはしたの 龍田がしりを もみぢばの うすくこく屁に さらす赤はぢ
051.秋のたの かりほの庵の 歌がるた 手もとにありて しれぬ茸狩*6
052.歸んなん いざとて入りし 里の名は たゞ落栗の 音にのみきく
053.子を思ふ 朝三暮四の 猿の尻 真赤にひとつ のこす枝柿
054.ひとつとり ふたつとりては やいてくふ 鶉なくなる 深草のさと
055.紅葉ちる 萩や薄の 本舞台 まづ今日は これぎりの秋

冬十五首

056.神々の 留守をあづかる 月なれば 馬鹿正直に 時雨ふるなり
057.掃除せぬ 門の落葉を ふみわけて こそ/\/\と たれかとはまし
058.世の中は われより先に 用のある 人のあしあと 橋の上の霜
059.袖の上に 霜か雪かと うちはらふ あとよりしろき 冬の夜の月
060.雪ふれば 炬燵櫓に 楯こもり うつていづべき いきほひはなし
061.一むれの 奥女中かと 見るまでに 木ごとに花の わた帽子雪
062.駒とめて 袖うちはらふ 世話もなし 坊主合羽の 雪の夕ぐれ*7
063.よし人は 犬といふとも ふる雪に わがあとつけて いでんとぞ思ふ
064.空と海 ひつたりつきの 中川の はら/\松に たつ千鳥かな
065.さん水に ひよみの酉の 市ながら いもほり僧都 なきにしもあらず
066.わけてけふ めでたかり場の 物数も ありとやいはふ 屋形尾の鷹
067.しろかねの 台にこがねの 盃の 花はいはずと 人やすゐせん
068.浅草の うら白根松 やぶ柑子 だい/\ところ 本だはら町
069.今さらに 何かをしまん 神武より 二千年来 くれてゆくとし
070.年波の いまやこえんと 門々に たてし師走の 末のまつやま

恋十首

071.千早振る 神も御ぞんじ ない道を いつのまにかは よくをしへ鳥
072.畳算 おきて松葉の かんざしは あふみおもての うらかたぞ憂き
073.たゝみこむ 胸の思ひを いひかねて ひねりし塵や 山となるらん
074.おさらばと 背けし顔を むき玉子 きぬ/\糸の きるにきられず
075.あなうなぎ いづくの山の いもとせを さかれてのちに 身をこがすとは
076.をやまんと すれども雨の 足しげく 又もふみこむ 恋のぬかるみ
077.うづみ火の したにさはらで やはらかに いひよらん言の 葉烟草もがな
078.灰吹の 青かりしより 見そめこし こゝろのたけも うちはたかばや
079.逢はまくは 瓜のはたけに ねもしなん とりつる履の うき名たつとも
080.世の中に たえて女の なかりせば をとこの心 のどけからまし*8

雑二十首

081.富士のねの 表はするが うらは甲斐 前は北面 のちは西行
082.すみだ川 今は吾妻の 都鳥 業平などは 在五中将
083.てる月の かゞみをぬいて 樽まくら 雪もこん/\ 花もさけ/\
084.全盛の 君あればこそ 此さとの 花もよし原 月もよし原
085.千早振る 神代のむかし 面白い 事をはじめし わざをぎ*9の道
086.日の鼠 月のうさぎの かはごろも きてかへるべき 山里もがな
087.世をすてゝ 山に入るとも 味噌醤油 さけの通ひぢ なくてかなはじ
088.開た口 戸ざゝぬ御代の めでたさを おほめ申すも はゞかりの関
089.文月の ふみもや通ふ 神無月 うらをかへして あそぶ赤壁
090.すみよしの 新田ふえて とし/"\に あとじさりする 岸の姫松
091.雀どの お宿はどこか 知ねども ちよつちよとござれ さゝの相手に
092.あぶかしい 一葉にのれる 蜘蛛をみて 舟をつくりし 無分別もの
093.徒らに すぐる月日も おもしろし 花みてばかり くらされぬ世は
094.寝てまてど くらせどさらに 何事も なきこそ人の 果報なりけれ
095.世の中は さてもせはしき 酒のかん ちろりの袴 きたりぬいだり
096.世の中は いつも月夜に 米のめし さてまた申し かねのほしさよ
097.念仏を 申すこゝろの やさしさは 鬼も十八 檀林の僧
098.鶴九百 九十九年め 亀九千 九百九十九 あゝ尚歯会
099.千年の つるの玉子を ときはなる 松の十かへり かへすめでたさ
100.万年と かぎれるかめも 尾のながき 友にひかれて 億兆やへん

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